薬局薬剤師が公務員に転職ってどうなの?メリット・デメリットを解説。
転職先の候補として公務員が気になっている薬剤師の方も多いのではないでしょうか。
今回は、公務員薬剤師の仕事内容や給与、転職するメリット・デメリットなどについてご紹介します。
薬局薬剤師が公務員に転職する方法についても解説しているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
- 安定した収入を得たい
- ワークライフバランスを重要視したい
- 副業をするつもりがない
- 様々な業務を経験したい
公務員薬剤師とは?仕事内容を解説。
公務員薬剤師とは、国や都道府県、市区町村などの行政機関に所属する薬剤師のことを指します。
中央省庁など国の機関に所属する「国家公務員の薬剤師」と、都道府県や市区町村の地方自治体に所属する「地方公務員の薬剤師」が存在します。
仕事内容についてそれぞれみていきましょう。
国家公務員の薬剤師
国家公務員薬剤師は所属ごとに大きく4つに分類されます。
- 厚生労働省に所属する薬系技官
- 厚生労働省地方厚生局麻薬取締部に所属する麻薬取締官
- 自衛隊で薬剤官として勤務する自衛隊薬剤師
- 刑務所で法務技官として勤務する刑務所薬剤師
厚生労働省に所属する薬系技官
薬系技官は様々な分野を担当するため、業務内容は多岐に渡ります。
担当内容の一例。
薬事:薬機法、薬剤師国家試験、医薬品の製造や品質管理など。
保険医療:診療報酬・調剤報酬、医薬品価格など。
食品安全:食品添加物や残留農薬、容器包装の規格基準など。
化学物質:化学物質のリスク評価、毒劇物の取り扱いなど。
研究開発:企業や大学の研究予算の確保など医薬品に関する研究開発の促進。
その他行政:テロ対策や感染症対策など。
他の省庁や民間企業などに出向する場合もあります。
厚生労働省地方厚生局麻薬取締部に所属する麻薬取締官
麻薬取締官は指定薬物の乱用を防ぐことを目的とし、幅広い分野で活動します。
・非合法に取引される規制薬物の取り締まり
麻薬、覚醒剤、大麻、向精神薬、アヘンなどの危険薬物に関わる犯罪についての捜査や情報収集を行います。国際的な密売を阻止するために諸外国の捜査機関と連携することも。
・医療用麻薬、向精神薬などの流通・保管・使用について監督や指導
病院や薬局、製薬企業などに立ち入り、麻薬や向精神薬が適切に管理・使用されているかについて指導を行います。
・啓発活動や相談業務
学校などで講演を行うことにより指定薬物の危険性を伝えるのも麻薬取締官の役割の一つです。また、薬物乱用者の社会復帰を支援することもあります。
自衛隊で薬剤官として勤務する自衛隊薬剤師
自衛隊に勤務する薬剤師は「薬剤官」と呼ばれます。自衛隊病院や駐屯地の薬剤科に配属され薬局と同様の調剤業務を行う場合もあれば、衛生隊員として医薬品や衛生材料の補給、管理を担当する場合もあります。
刑務所で法務技官として勤務する刑務所薬剤師
刑務所薬剤師は全国にある刑務所内で調剤業務を担当します。応需する処方せんは囚人のものですが、薬剤師が囚人と接することはありません。したがって、服薬指導はなく、調剤と監査が主な業務内容になります。
その分給与は低いことが多いようです。
地方公務員の薬剤師
地方公務員薬剤師の職場は大きく4つに分類されます。
- 薬務課
- 保健所
- 公立病院
- 衛生研究所
どの部署に配属されるかは辞令次第ですが、管轄外への転勤がない点は大きなメリットと言えるでしょう。
薬務課
都道府県庁や市区町村役場の薬務課では、製薬企業などへの立ち入り検査や製造販売業の許可、監督指導を行います。
保健所
保健所は各地域の薬局や卸売販売業、飲食店、宿泊施設、公衆浴場などに立ち入り、検査や監督指導を行うことで薬事衛生、環境衛生、食品衛生の維持に努めます。
公立病院
県立病院や市立病院などの公立病院に勤務する薬剤師も地方公務員に該当します。業務内容は一般的な病院薬剤師と同じで、調剤・服薬指導・治験対応・チーム医療の参加などが挙げられます。
衛生研究所
衛生研究所は各地域に設置されている行政機関です。薬剤師は主に感染症予防の研究や有害物質の検出などを通して医薬品の衛生管理や食品衛生、環境衛生、公衆衛生の管理を行います。
公務員薬剤師の年収は?
公務員薬剤師の平均年収は550〜650万円と言われています。薬局やドラッグストアと比べてやや高めと言えるでしょう。
しかし初任給は20万円ほどで一般的な薬剤師よりも低めです。公務員は長く勤めると年収が上がっていくシステムなので、将来的には安定した収入を得ることができます。
薬局薬剤師が公務員に転職するメリット。
薬局薬剤師が公務員に転職した場合、どんなメリットがあるのか見ていきましょう。
雇用が安定している
薬局やドラッグストアなどの一般企業では業績悪化や経営者問題により倒産したり解雇される可能性がありますが、公務員にはそのリスクがありません。
昇給や賞与などの給与面も業績に影響されないため、安心して働き続けることができます。
充実した福利厚生を利用できる
公務員は一般企業と比べて福利厚生が充実している点も特徴の一つです。福利厚生を上手に活用することで、一般企業よりもワークライフバランスをとりやすい環境にあると言えるでしょう。
福利厚生の一例。
- 病気やケガ、被災時の給付金
- 育児や介護の休業手当(育休3年、休業明けの時短制度有)
- 結婚休暇
- 社宅や家賃補助
- 寒冷地手当
- ホテルや保養所など提携施設の利用割引
- 旅行代金の割引
- 財形貯蓄
- 人間ドッグ補助
- フレックスタイムやテレワーク
退職金も一般企業より多いようです。
様々な業務を経験できる
公務員薬剤師は2〜3年周期で異動になるケースが多く、配属先の部署によって業務内容は異なります。
薬局やドラッグストアは店舗移動があっても基本的な業務内容に変わりはありませんが、公務員薬剤師なら幅広い業務を経験することができます。
薬局薬剤師が公務員に転職するデメリット。
引き続きデメリットについても見ていきます。
異動や転勤が多い
公務員薬剤師は2〜3年周期で部署異動があり、配属先によっては転勤が必要になるケースも少なくありません。幅広い業務を経験できる反面、環境や業務内容が頻繁に変わることにストレスを感じる方もいるでしょう。
初めのうちは給与が低い
公務員薬剤師は勤続年数を重ねるごとに安定して給与が増えていきますが、初めのうちは20万円ほどと薬剤師にしては低めです。
薬局やドラッグストアから転職した場合は一次的に給与が下がる可能性が高く、それに伴い生活水準を落とす必要があるでしょう。
副業ができない
公務員薬剤師は「国家公務員法」や「地方公務員法」により副業が禁止されています。YouTubeやブログ、Webライター、動画編集など、近年では様々な副業がありますが、公務員はそれらで収入を得ることができません。
一般企業で副業をしていた方や副業に興味がある方には大きなデメリットと言えるでしょう。
兼業は条件付きで限定的に認められていますが、基本的にできないものと考えた方が良さそうです。
公務員薬剤師が向いているのはこんな人。
ここまで公務員薬剤師の仕事内容や給与、メリット・デメリットなどについてご紹介してきました。以上を踏まえて、公務員薬剤師が向いている人についてまとめます。
- 安定した収入を得たい
- ワークライフバランスを重要視したい
- 副業をするつもりがない
- 様々な業務を経験したい
公務員は一般企業とは違い、利益を追求する仕事ではありません。そのため、社会や人の役に立ちたい方にも最適な職場と言えます。
薬局薬剤師が公務員に転職する方法。
最後に、薬局薬剤師が公務員に転職するための具体的な方法についてご紹介します。
国家公務員に転職する方法
上述した通り、国家公務員の薬剤師は大きく4種に分類され、転職方法も異なります。それぞれ見ていきましょう。
- 厚生労働省に所属する薬系技官
- 厚生労働省地方厚生局麻薬取締部に所属する麻薬取締官
- 自衛隊で薬剤官として勤務する自衛隊薬剤師
- 刑務所で法務技官として勤務する刑務所薬剤師
薬系技官
厚生労働省に所属する「薬系技官」になるためには、「国家公務員総合職試験(化学・生物・薬学)」に合格しなければなりません。
試験内容とスケジュール
受験資格
- 21歳以上30歳未満
- 日本国籍を有する
教養試験(文章理解、人文、社会など)
専門試験(基礎数学、薬学など)
専門試験(薬化学、薬剤学)
人物試験(個別面接)
政策論文試験
業務見学
グループディスカッション
最終面接
内定
参照元:厚生労働省 薬系技官 採用情報
試験の難易度は非常に高いです。令和5年度の採用人数はわずか9人でした。
麻薬取締官
薬剤師が麻薬取締官になるためには、厚生労働省地方厚生局麻薬取締部の「薬学系選考採用試験」に合格しなければなりません。
試験内容とスケジュール
受験資格
- 29歳以下
- 麻薬取締官として職務遂行に支障のない健康状態
- 日本国籍を有する
- 論文試験
- 適性検査試験(マークシート式)
- 面接試験
面接
参照元:応募及び採用に関する情報|「麻薬取締官」ウェブサイト
採用試験は欠員が出た時のみ行われるため、非常に狭き門となっています。
自衛隊薬剤師(薬剤官)
薬剤師が自衛隊に所属する薬剤官になるためには、陸・海・空の各自衛隊で行われる「薬剤科幹部候補生」の採用試験に合格し、約1年間かけて初級幹部に必要な知識や技能を習得しなければなりません。
教育終了後はそれぞれの自衛隊の衛生分野に配属されますが、薬剤官は初めから幹部自衛官として勤めます。
試験内容
一次試験:筆記試験
二次試験:小論文試験、口述試験、身体検査
参照元:自衛官募集ホームページ
薬剤師は薬学部卒業後の24歳以上から28歳未満の入隊に限られます。
刑務所薬剤師
刑務所薬剤師は国家公務員ですが法務技官(作業専門官)として採用されるため、国家公務員試験に合格する必要はありません。薬局などに転職する時と同様に、刑務所ごとの採用試験を受けることになります。
求人情報は全国のハローワークで探す必要がありますが、転職サイトでも一部掲載されています。
薬剤師転職サイトで刑務所薬剤師の求人が確認できたのは【薬剤師の派遣・転職 お仕事ラボ】だけでした。
地方公務員に転職する方法
薬剤師が地方公務員になるためには、自治体ごとに行われている「地方公務員試験」に合格する必要があります。試験の日程や内容、年齢制限などは自治体ごとに異なります。
試験内容とスケジュールの例
受験資格
- 年齢制限は30歳前後
- 教養試験(文章理解、人文、社会など)
- 専門試験(薬学など)
- 小論文試験
- 人物試験(面接やグループディスカッション)
詳細は自治体の公式ホームページを確認しましょう。
まとめ|薬局薬剤師が公務員に転職ってどうなの?
薬剤師が公務員になるためには非常に少ない採用枠を勝ち取る必要があり、苦労する方がほとんどでしょう。
しかし、利益を追求する一般企業とは違い、社会や人のために働く公務員はやりがいのある職種であるため、目指す価値は十分あると言えます。
公務員一本に絞って転職活動をするのはリスクが大きいため、一般企業と並行するのがオススメです。
一般企業への転職なら「転職サイト」に一度相談してみるのがおすすめです。
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